2014/10/25

茅野日誌 第4回


「今日は作業所にご挨拶に伺います。」とOさんに促され作業所をまわる。作業所というのは障がい者が社会生活へのステップとして日々企業から頂いた仕事をしたり作業をこなしたりする場所である。市民館からほど近い場所にあるその作業所は花の名前がついていて古くてカッコいい建物が時代を感じさせる。
所長さんにご挨拶し中を案内してもらう。中は二階建てになっていて様々な作業をしていた。一階ではお菓子の箱作りや詰め込み。二階では革細工やビーズ細工で鍋敷きを作ったり食器洗いのスポンジやホースの取り付け金具などの加工をしたりとバラエティに富んでいる。小さな工場のようでもあるが雰囲気はのんびり静かである。それぞれ集中して作業しているので声をかけるのはためらわれたが革細工の加工をしていた男性に話しかけると照れくさそうに「見られると恥ずかしいなあ」と言っていた。ここへ来て13年目とのこと。小銭入れや小物入れ、しおり等を丁寧に作っていた。いい?と聞き、手元の写真を撮っていると「コッチは撮らないのかよう〜」とおどけた声が上がる。大きなガタイのその男性は出来た革細工の形を整えて出荷に備える仕事らしい。



「次に撮ろうと思ってたんですよ〜」というと嬉しそうに自分の仕事を見せてくれた。隣のテーブルには針仕事をしている女性がいる。鍋敷きを作っているとのこと。それぞれに自分の仕事を聞かれると照れつつも嬉しそうに語ってくれるのが印象的だった。
こちらは入り口にあるお菓子とパンを作っているキッチン。

もちろんこちらと目を合わせない人もいるのよ。ぱっとみてそっぽを向いてしまう人もね。しかし総じて落ち着いた空気が流れている印象があった。
所長さんに話を伺うとここはB型の作業所で主に精神障がいの方が通っているとのこと。「そのB型ってなんですか?」と僕の八っつぁんぶりも我ながら呆れる素人丸出しの質問にもやさしく答えてくれた。「こういった障がい者のための作業所はA型とB型の2種類があってA型は通常と同じ労働契約を結び一般と同じ様に賃金を保証されるのに対してB型は通常の仕事が難しい障がい者を対象に日々の生活のリズムを作ったり、人と作業を通じてふれあったりする目的の場所である」ということらしい。一般就労に対して保護就労とも言うと。やさしい所長の返答に僕チンは頷くばかり。おれはしょうがくせいか!
しかし疑問は矢継ぎ早。「で、精神障がいってそもそも何ですのん?」とオバカ質問は続く!
「主に障がいは身体、精神、知的と三種類あって、体に障がいがあるのが身体、心に障がいがあるのが精神、知能に障がいがあるのが知的」とざっくりとだがシンプルに教えてくれた。しかし僕はまだいまいちわかっていない。「身体はわかるのですが精神と知的の違いはどこら辺でしょうか?」「心の病気というのは例えば躁鬱とか統合失調とかですね。知能の障がいというのはダウン症とか」。をを!ありがとうございます。何となく僕にもイメージ湧きました。で、この作業所は精神の人が主に来ているのですね。「そうなんです。精神の人は精神の人、知的の人は知的の人で一緒に集まった方が作業所が何故か落ち着くんですよね。それにそれぞれに得意な作業の違いもあるみたいでそんなこともあって作業所ごとにわけています。」と明快なお答え。ああ勉強になるなあ!躁鬱の人は知り合いにもいたし、僕も一回だけだけど心療内科にいったことがあるのね。ま、僕の場合は単なる過労でいったところ医者がなんだか素っ気ない人でそれでもらった薬にも結局手を付けずに終わったんだけど。
その後一階でお菓子の箱を作っている人たちに混じり話を聞く。自分が医者にかかった話をすると途端に俺も私もと話が上がる。「いい医者に出会うことが重要なんだよね」「変なお医者さんてホントにいるんだよ」なんてフツーは聞けない本音トーク炸裂。「お薬だけ大量に出されて薬づけになっちゃうこともあるからホントに怖いんだよう」なんて笑えない話を笑いながらする様子は居酒屋トークと変わらない!手作業をしながらの話も楽しく随分と長居をしてしまった。
建物は以前病院だったみたいでちょっと雰囲気があり最初はちょっとビビったんだけどそれもなんだか逆に歴史を感じていい雰囲気に思えてくるし、晴れた日だと山々が見え居心地の良い所だった。
少しずつプロジェクトに光が射したような気がしたのでした。
毎日人にあったり話を聞いたりでブログも追っ付いてないですが写真だけでも載せます!
事業提案者の加藤さんに話を伺う。


同じく事業提案者の篠本さんにパターゴルフ場で話を伺う。
ここで土曜日に知り合いの障がい者とパターゴルフをやっているらしい。
八ヶ岳の麓にあるこの街学園。
ここは障がいのある成人のお子さんをもつ保護者たちが立ち上げた生活介護施設。
所長のHさんは東京出身の山男。気さくな人柄で施設を案内してもらいました。
この街学園のHさん。
素晴らしいロケーションにある障がい者生活介護施設でうらやましいぞ。
さあいよいよ次回はプロジェクトの発表だ!

2014/10/13

茅野日誌 第3回


本日は今回のプロジェクトのもうひとつのキモ!プロジェクトを進めつつ知り合った人に仕事をもらうというわらしべ長者作戦いよいよ開始!
先日紹介してもらった仕事は白樺湖のボート乗り場の店番。

いわゆるリゾートバイトである。白樺湖は茅野駅から車で40分ほど山を登ったところにある。夏のリゾート地として人気が高く周りにはホテルや旅館がある。正直そんな浮かれたリゾート地には学生時代から縁遠く、かなりイケテナイ青春時代を送った僕チンとしては「ケッ」というひがみ根性丸出しの思いしかなかったが、これも何かの縁であろうと9月の連休、秋晴れの中、白樺湖に向かった。
蓼科山をバックに。

ボート乗り場にはさすがにまだ観光客はいないのだがそこは山間の道を経た湖である。朝からオープンカーで乗り付けたオジさんのグループが自分の車を湖畔の駐車場に止め、うっとりとしていた。初デートで彼女の写真を撮りまくる彼氏の如く、自分の車の写真を撮るのに必死である。その様子は休日のリゾート地の光景ならではだなあとなんだか微笑ましい。
ややあって「おはようございます」とガタイのいい男性が声をかけてくる。ボート乗り場のTさん。丸っこい体に日焼けした顔はそのままでボート乗り場のゆるキャラである。Tさんにあれこれを教わりいざバイトスタート。今日は晴れていて混雑するだろうとのこと。日も上がってきてぽつぽつとお客さんが来始める。
ここにあるボートはスワン



普通の手漕ぎボートとフロートという二人乗りの足こぎボート、それにサイクルボートという一人乗りの自転車型ボートの4種類。それに釣り竿の貸し出しもやっている。仕事はお客さんにライフジャケットを渡したり戻ってきたボートを鍵竿で引っ張ったり、はたまたチケットを売ったりととにかく全部を手分けしてやるのだ。
「最初は撒き餌としてとにかく湖に浮かべることがコツ」というTさんは「少し長めに乗っていいですよ」と軽やかな笑顔とともに来始めたお客を湖に送り出す。


するとホントにその数組が湖に散らばった頃バタバタとお客さんが集まってくる。さすがにTさんの長年の勘は鋭い。言った通りの展開にこちらはてんてこ舞いになる。来る人にライフジャケットを渡しボートに乗せ、紐を外すというサイクルをひたすら繰り返しかなり忙しい。
働いております!

一段落すると一杯100円の鯉のえさを並べる。これもまた賑やかしとしては上手い手法。100円のえさが終わる頃には目の前のスワンに気持ちがなびいてくるという寸法。子供たちは「乗りたいよう」とだだをこねる。普段は無理メなゴネもせっかくの家族ドライブとあってはまあいいかとやや高めの値段設定にもかかわらずスワンは次々と出て行く。
お次はカップル。若いカップルはスワンよりボートに乗りたがる。やはりデートの定番は手漕ぎのボートなんでしょうね。「やだ彼カッコいい♡」とこれまた定番の展開にこちらも笑顔で送り出す。
大学のサークルなんてのも。乗る段になって「誰と乗る?」なんてカマトトなくだりがあった後なんだかホカホカとした顔つきで各自ボートにスワンにと乗り込み湖へ。時折大きな声が上がるのも彼らで休日の湖に華を添える。
そうかと思えば草食男子三人組あり、訳あり風なカップルあり、はたまたちょっと本職風の怖いお兄さん方ありでホントに様々な人たちがやってくる。連休の行楽日なんだなと改めて感じ入った。途中でじゅんじゅんさ〜ん!と声がするので何かなと思うと市民館のOさんGさんの女子コンビがのぞきに来てね。




 Oさん登場!

Oさんのご実家は元々白樺湖で旅館をやっていて。せっかくですからとボートに乗っていった。そんなこんなで一日休む暇もなく忙しかったのでした。
正直、こういった仕事バカにしてたんだよね。自分も子供の頃ならいざ知らずボートなんて乗らないしそもそもこういうところに来ないしね。素直に楽しめるようなキャラじゃなかったのもあって。
けど、それぞれに楽しそうで幸せそうな雰囲気にこちらも心が弾んでいくのよ。明るいエネルギーをもらえるというか。これは初めての体験でした。Tさんのキャラクターも素晴らしくてね。お客さんを邪魔しない様にしながらも「写真撮りましょうか」とか「仲いいですね」なんて気軽に声をかける。こういう心遣いもいい思い出の一役を担うわけでのほほんとしつつも気を遣っている仕事っぷりに感心しました。
行楽地で働くということは人に楽しんでもらう仕事なわけでそういった意味では僕も多いに参考になるところがありました。いやホントにいい体験だったなあ。嬉しそうな顔って周りも楽しくさせるのだなと。きれいな場所ということもありこちらも笑顔が自然に出て来て自分自身が遊びに来たような気分だったのでした。
ただひとつ、ピーカンの水辺って恐ろしいほど日に焼けるんだよね。

三日間の仕事が終わった後はしばらく顔が痛かったです。
さあ、明日からまた取材だ〜!

2014/10/04

茅野日誌 第2回



「茅野市ってそもそもどこにあるの?」


と東京の知り合いから質問された。長野県だよ、というけど、いまいちピンと来ていないらしい。松本や上田市なんてのはよく聞くがそもそも茅野ってどこにあるんだろう。調べてみると長野県の南側、南信地方といわれる場所で諏訪湖の少し南にあり、東京の人間からするとのんびりした雰囲気の町であることは間違いない。有名なのはなんといっても「山」ね。右も左も山に囲まれていてその合間に人が住んでいるといった感じ。その山というのは八ヶ岳や蓼科、守屋山であり近所には諏訪大社もあるので観光地にもなっている。
これは上社本宮。

御柱。7年に一度御柱祭というお祭りをして社の四隅に建てる御神木。

名産はそばと寒天。打ち合せのときにもおいしいおそば屋さんに連れていってもらった。
生活はみんなほぼ車で移動していてぼくも職員の方から特別に軽トラと自転車をお借りして生活している。繁華街といえるようなエリアはないかも。車移動が基本だからそれに合わせて街も昔とは変わっているんだろうね。ユニクロと西友、その他スーパーなんかはだだっ広い駐車場と共に少し離れた街道沿いにありました。パチンコ屋もね。ここら辺の風景は他の地方都市と一緒。
でね、楽しいのは空気と野菜がおいしいこと!
地元産の野菜が近所の農協(のスーパー)で販売していて。今の時期はレタスやトマト、茄子やピーマンなんかがおいてある。茗荷なんかもおいしくて沢山はいっているのに、東京より3割程度は安いんだけど、家の向かいのおばちゃんが「食べなよ」といって家庭菜園の野菜を持ってきてくれて結果余り買うことなく新鮮な野菜を楽しんでいる。いやあ、帰りたくないなあ。
隣のおばちゃんがくれたキュウリとゴーヤ。
キュウリとゴーヤ。



「それでは施設にご挨拶に行きましょう」
Oさんに連れられ精明学園に伺う。ここは18歳以上の知的障がい者の支援施設と滞在型のケアホームがくっついたもので約80人程度が生活している。支援施設っていうのは障がいを持った人が自立し社会生活を行なえるように支援、訓練する場所でケアホームというのは介護が必要な人のための滞在型施設ね。それがくっついたものと思えばいいのかな。
山の中にあるその施設は誤解を恐れずに言えば入るのにちょっと勇気がいった。玄関を入ると床に座っている若い男性がじっとこちらを見ている。中に入っていくと人々の視線が集まり、注目される。もちろんこちらが挨拶しながら入っていけば何となく見るのは当たり前でしょってだけなんだけど、この瞬間かなり緊張した。「こんにちは」と挨拶すると返す人もいるしそのままじっとこちらを見ているだけの人もいる。初めてで緊張するのは仕事先や学校でのWS等でもおなじことで、べつに当たり前だよなと落ち着いてきた。子供たちだって話しかけても上手く返事できない子もいるからね。
僕も「失礼があってはいけない」と逆に気負っていたところがあったのだろう。なんといっても初めての企画だししかも障がいを持った方々であるのだから!というような肩肘はったようなね。普段だったら「『カッコーの巣の上で』を思い出したよ!」なんて軽口のひとつも叩くところなんだけどやっぱり気を使うじゃん。相手にどう取られるかわからないことをうかつに言うべきではないよね、マナーとして。
そんな気負いが取れてきたところで担当の林さんとご挨拶。林さんは物腰の柔らかい方でここは最近建て直してきれいになったんですよと施設内を案内してくれる。

中は三つの生活棟(男女に分かれている)と食事や集会が出来る棟、それにレクや運動が出来る体育館が備わっており近代的な旅館のようなつくりだった。建物と建物の間には中庭があり体育館等は近所の方々も利用しに来るらしく、全体的に開放的な雰囲気に溢れている。働いている人たちは若い人が多く訪問した時間帯は夕食前の自由時間だったこともあり人々が自由に行き交い集っている。それぞれの様子はあまりじっと見ることが憚られたのでなんとなくではあるがリラックスして過ごしているように見えた。
話を伺いながら見学しそれぞれの年齢や男女比等を質問しながら見ていたが林さんが興味深いことを言っていた。ここに入っている人たちは3:2の割合で男性が多く、一般的に知的障がい者は男性が多いと言われているとのこと。へえ。何か理由があるのか聞いたがそれはわからないとのこと。男の人の方が生活に関係ない趣味で夢中になってファンタジーの世界に行きやすいとは思うけど関係あるのかな?と素人の僕は妄想したんだけどね。後で調べてみます。
施設内を一回りしたところで改めて林さんにお話を伺った。
こういった知的障がいの支援施設はそれとなく偏見の目を向けられやすくそして隠されてきた歴史もあったと。だからこのような場所に施設があるということでもあるが、だんだんとそれもなくなってきて建物も新しくなり利用者も心身ともに清潔に過ごせるようになって嬉しいとのこと。
僕も偏見なかったとはいいません。ていうか知らないんだよね、実情を。知らないからこそ偏見は生まれるのだろうし軽く冗談を言いあえるような関係にもなっていない現実がある。その現状をいきなり変えることは出来ないけど、知ってもらう糸口は作れるのではないだろうか?このブログもそのひとつ。
一人元気で人懐っこい女性がいてね。「また来てね〜!」と送り出してくれて、僕らも明るく帰ってきたのだった。
ま、とにもかくにもまずは僕自身が知ることが出来たことが一番の収穫だったと思う。