2014/11/21

茅野日誌 第8回

うわあああ!直前だよう!

あっという間にツアー本番まであとわずかになってしまいました。
今回は創作の過程をレポートします。

オーディオツアーということで、とにかくガイド音声が命なわけです。参加者はイヤフォンガイドをつけて街を歩き回るため、不備のないよう気をつけてナレーションを録音せねばイカンと。

今回、音響スタッフさん大大大活躍です!

オーディオガイド用の受信機ね!フフフ、詳細は秘密。

これがまた分量が多くてね。思いつくのは簡単だけど、やるのは大変なのよね〜。出演しないし楽かも♡と思った僕チンは大間違いのトンチキ野郎だってことがナレーションの構成を手がけてわかりました。
まずはコースを歩いておおよその分数をはかる。その際に通りのどちらを歩くかも決定しながらね。スタッフを含めると20人を越える団体になるため歩行者の邪魔にならないように配慮しつつのルート設定も必要で。

道幅も見るのだ。

景色の現れ具合もチェック!

それらをチェックしつつ必要なガイドを決めていく。「前の道を右へ」とか、「通りの左側を直進」とかね。アナログのナビなわけ!このツアー専用のね。更に喋る内容もすてきに吟味していくわけ!ここら辺はじゅんじゅんSCIENCEのダンサーにして専属イラストレーターにして敏腕制作の久井麻世がきっちり仕事してくれて。っていうか君が余りにもきっちり仕事するから僕チンの立場がすっかり危うくなってしまったじゃないかああ!と、彼女のフル回転の活躍でかなり時間を短縮してくれたのでした。
ここまできてやっと音声の録音ね。「仕事がなくなったら結婚式の司会をすればいい」と一部から言われている僕チンですが、マイクの前でセリフを喋るってやったことなくてね。たまにラジオのインタビューなんかで喋ることはあっても、基本自分のことを喋るじゃん。たとえ自分で考えたとしても書いてある文字を喋るってホントに難しいのだなと。自分で書いといて舌が回んないんだよ!どれくらいかといいますと、滑舌って言葉が「かちゅぜちゅ」ってなるくらいのレベル(涙)舌も鍛えないと動かないんだなとこの年にして改めて学んだのでした。かあちゃん、オレまた少し賢くなったよう!


収録の様子。何回か間違えるが「大丈夫ですよ」という市民館音響チーフKさんのやさしいかけ声が逆にツライ。逆に麻世はナイスなトーンでノーNG!

慣れないナレーション録りのなか、「We Are The World」のマイケルのマネをして気分転換。なお、誰も突っ込んではくれませんでした、、、、、、、。


スピーカー越しの変な自分の声にへこたれつつもなんとか録り終わり他の出演者の音声も録音していく。

こんなスタジオで録音しました。

一応演出してる風のショット。実際は「あ、もういいかんじでやってもらってけっこうですう〜」とかなりイイカゲン!

音声の次は各アトラクションの稽古。
このツアーはミステリーツアーになっていてどこを通るわからない状態でガイドをたよりに進むんだけど途中で幾つかしかけがあるのね。それの段取りや稽古を出演協力の皆さんと確認し進めていった。



秘密の打合せ。

別のアトラクションの打合せ。

秘密小道具の作成。

技術ミーティング。


その他にも内容は盛りだくさんでここで書くわけにはいかないんだけど市民館のスタッフを始め本当に様々な方々と一緒に準備を進めています。ぶっちゃけお客様より圧倒的に人数多いからね、仕掛ける側が!出演していただく人だけでなく見えないところにも大勢の人に関わってもらっているのでなんとも贅沢なツアーとなっています。
ああ、23日は晴れるといいなあ。
あ、そうだ!諏訪大社さんにお参りに行かなくては!
それでは皆さん。23日にお会いしましょうね。
合い言葉は「パノラマ チノラマ」で!


2014/11/16

茅野日誌 第7回



なんだかほんわかした記事をあげている最中にプロジェクトの本番が近づいて来てしまいました!うああああああ!間に合わないよう〜!おかあちゃああああああああんんんんん〜〜〜〜〜!!!!!
来週本番だよ〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!

、、、、、、す、すみません。取り乱しました。
展開についていけない人のためにご説明しますと第五回のブログで報告したように来週の日曜日1123日にツアー型パフォーマンスを開催します。
僕が茅野の福祉関係の施設を訪問し関係者にあって感じた行程をそのまま体験してもらおうと思いこんな形になりました。

これは駅のコンコースに張ってあるプロジェクトの壁新聞です。

参加者の皆さんはイヤフォン式のオーディオガイドを耳につけてそれに従って市民館から福祉をめぐる旅に出かけます。茅野の、とくに障がいのある人びととそれに関わる人たちをめぐる90分のウォーキングツアーです。

ツアーイメージ


そもそもツアー型パフォーマンスってなに?という方も多いかと思われます。
最近東京でも行なわれることが増えてきた形態ですが、僕がそれを初めて体験したのは3年前の研修先ベルリンでした。



時間ごとに集まったお客さんはイヤフォンガイドをして街を歩いていきます。そこにテーマにまつわる人びとがいて話を聞き、施設をめぐります。面白いことにそれらのツアーは劇場が企画したもので「演目」としてプログラムになっていましたが、街をテーマにした美術ガイドのようなものでもありました。
劇場、美術館、ともに「室内で出来上がったものを鑑賞する」場所として認識していますが、劇場が企画しつつも全く反対に「外に出て現実を眺める」というスタイルはとても新鮮に映りました。そこにはもちろん演出もあり生のママの現実と同じではないのでしょうが、それでもそのように外を眺める「視点」のあり方がとても新鮮だったのです。そしてそれは演劇とはなんだろう?アートとはなんだろう?という大きな問いかけを含んでいました。

そのようなスタイルをいつかどこかでやってみたいと思っていましたが、茅野で福祉施設をめぐっているときにそのうちの幾つかが市民館から歩いていける距離にあることに気付き、今回のテーマにはまさにうってつけのスタイルだ!と確信しました。ひらめいた瞬間は本当に次から次に「あれもできる、これもできる」といままでのアイディアのかけらを入れる箱が見つかった!という嬉しい思いで一杯でした。

しかしやはり「障がい」というテーマは重く、簡単に語れるようなものでもありません。そもそも触れてほしくない、という思いの人も大勢いらっしゃいます。そしてその理由も様々でした。曰くこんな短い時間では語れない。障がい一般を説明しても個別のケースは紹介しきれない。そもそもツアーというスタイルがわからない等々。無理もありません。
そういった方にご説明し参加出演を打診し、果ては障がいのある方自身にもご出演いただけないかと奔走しました。皆さん現状を伝えたいというお気持ちは強く、結果的に様々な形でご協力をいただけることになりました。
そんな中何人かが出演いただけることになり街と施設をめぐって歩きながらエピソードに触れていくツアーを開催できることになりました。
ツアーの開催が正式に決まったのが10月末。出演者の交渉と改めての取材をそこから猛スピードで行い、準備を進めました。


各方面とのやり取りは普段の舞台公演の時と比べものにならないほど多く膨大な作業に凹みつつのプロセスでしたが、手助けしてくれる人も大勢出て来て下さって、現在は本番に向けて市民館のスタッフ、ボランティアの方々とともに全力で準備を進めています。

ここには書ききれないエピソード、間に合っていない話が沢山ありますが、一番伝えたいことはもちろんツアーに込めました。しかしかた苦しいものではなくあくまで楽しんでもらいたいという思いで取り組んでいます。僕も当日が楽しみです。参加者の人と一緒に楽しもうと思います。
 
ツアーのタイトルは題して『パノラマ チノラマ』
茅野をめぐる福祉の旅へ〜

日時は112311時からの回と14時からの回の2回。90分ほどの歩き旅です。
参加費は800円です。これは後日製作されるツアー記録の冊子代金も含みます。
終わってから当日の様子のドキュメンタリーを含めた小冊子を作成し参加者のお手元までお送りします。

詳細は市民館のページ、こちらをご覧下さい。
http://www.chinoshiminkan.jp/ccc/2014/1123.html

お問い合わせお申し込みは茅野市民館まで。

1回の定員15名という状況なので、既に参加数残り少なくなっております。参加を検討される方はお早めに。あ、当日は外を歩きますので暖かい格好と歩きやすい靴で来て下さいね!
では23日お待ちしています!

じゅんじゅん

2014/11/07

茅野日誌 第6回

茅野市にビーナスラインという道路が通っている。街から蓼科、霧ヶ峰、美ヶ原等の高原に向かって伸びている。1960年代に有料道路を繋いで命名され、その後無料開放となり観光道路として首都圏からも来客が多い道路とのこと。
よく車のCMに使われているのね。きれいな山の道でかっこ良く車が走っている映像は、大概ここと言われるほど風光明媚な景色で。僕も何回か通ったけどドライブにはもってこいの雰囲気でね。
そんな道路の脇に今回の訪問先、八ヶ岳福祉農園はあった。


ここもひまわり作業所やあすなろセンターと同じくB型作業所なのだが、ここの一番の特徴は農園の経営をしているということだろう。近くに畑があり農産物を作り、加工販売しているとのことで、作業中お邪魔し話を聞く。

所長のNさんは気さくでやさしそうな方で、ここで作っているものを紹介してくれる。
まず驚いたのはほおずき。


皆さん、ほおずきっていうと思い浮かぶのはどんなイメージですか?僕は昔母親が近所の林で取って来たほおずきを口に入れてならしていたことを思い出すのよ。知ってるかな。実の中身を楊枝でかきだして、袋状にしたものを舌でつぶしてギュッギュッと鳴らすのね。食べるものではなく鑑賞用や母親の子供の頃の遊びだったらしいんだけど子供心にも「食えないのか〜」と残念だったんだよ。だってとてもおいしそうでね。それ以来僕にとっては「食べられないもの」というレッテルを貼ってた。






そのほおずきがここにいっぱい並んでいた。ひょええ!どうするんだろうと思ったら「食用です」とのこと。な、な、なんですと!食べられるんですか。「どうぞ」とひとつ頂きさっそく食べてみる。をを。パクリ。う〜む。んまい!甘くてやさしい味が口の中に広がる。もうひとつパクリ。種もなく甘みが濃いのに驚く。これはおいしいなあ。
すすめてくれたおばちゃん。実が大きいのがわかるかな?

「これは食用のほおずきでうちの目玉商品です。」贈答用にきれいな箱に詰めて出荷しているとのこと。これは贈り物としても洒落てるし人気なんだろうなあ。
「美味しいです!」と声を上げるとNさんも嬉しそう。
奥の席に座りもう少し話を聞く。

ちょうど他の来客があったようで遠慮したのだが、どうぞと促され一緒に座る。その方は障がいのある人の就労や生活を支援する方で、Nさんと話している内容を聞くと鹿の肉の話。ここらで取れる鹿肉を加工食品として売り出したいと。今度はジビエかよ!


なんでもここらでは鹿を捕獲するのだが、最近は鹿肉を破棄せず特産品にしようとする動きがあるらしい。元々は伝統的に食べられていたものだし、フランスやイタリアではジビエ料理のいい食材でもあるため、どうにかビジネスに繋げられないかと話していた。同席していた僕とOさんは「だったらこんな感じはどうですか?」とか「結局どう食べるかですよね」とか、素人の分際でいいたい放題!彼らも笑いながらそうですね〜と聞いてくれた。なんだか大きな仕事の話をしているようで気が大きくなる。「加工工場を建設する予定があってね」とNさんが話してくれるのを聞いていると、僕チンはそれを建てているような心持ちに!すっかり気分は鹿富豪(笑)。ボートのバイトの分際でいい気なもんである。試食の鹿ハンバーグを頂くと、癖がなく美味しい。ソースはほのかな甘みが後を引くほおずきソースである。お洒落である。何ともニクいアンチクショウである。「ほんとはデミグラスの方が美味しいんだけどね」と、どこまでもグルメなトークに僕はもうメロメロ。
ここら辺りでは、鹿肉というと猟師が駆除したものをお裾分けで頂くことが多いらしく、血抜きをしっかりしていない肉は獣臭くて美味しくないらしい。小さい頃にそういった肉を頂いて食べた経験のある人が多く「鹿肉は臭い」と不評だそうで。しかし、しっかり処理すれば高タンパク低脂肪でヘルシーだし、臭みもなく美味しいものだと訴えていきたいと言っておりました。
お土産に鹿肉のロティ(ローストビーフの鹿肉版)のパックも頂き何をしに来たんだかすっかり忘れ気味。
頂いたロティとNさん。美味しゅうございました。

イカンイカンと思い直しこちらで働く人々の様子も聞く。「ここで働いている人たちは長い人が多いんだよね。みんなで仕事を通じて一緒に生活できることが何より嬉しくてね。畑での仕事は楽しいよ。」とお父さんのようなNさんは語ってくれた。周りにいるみんなも体を動かす仕事をしているせいか静かな人が多く、それもここのハッピーな雰囲気の一端となっている様に感じた。
街道沿いの元土産物屋といった風情の建物の中で、甘い匂いに包まれてなんだか幸せな気分になった。

なんだか一口に福祉の人々といっても本当に様々な生活や仕事があるわけで、とても一口では言えないなあと思いつつ、その多様さにますます元気をもらっている自分がいるのだった。



2014/11/01

茅野日誌 第5回



さあ、駆け足気味に更新いきます!今日は写真が多いよ。ついてくるんだ!

「お次はまた別の作業所にいきますよ。」とOさんと共に車に乗って。
しかし5分もしないうちに施設に到着。今回はまたやたらと早い。
到着したのはあすなろセンター。前回訪ねたひまわり作業所よりも広い敷地で線路の直ぐ脇というナイスロケーション。
 
早速所長のMさんとご挨拶し、TさんとIさんが案内してくれる。
一階では様々な作業を手分けして行なっている。イベント用の手書きポスターを作っていたり市民マラソン用のゼッケンを止める安全ピンを四つひとまとめにしていたり。そうだよね。こういった作業は人の手で行なわれているんだよね。安全ピンを4つにまとめる機械なんてないだろうし!



なんだか普通に社会科見学のような雰囲気になってくる。お次は二階へあがる。
割と広めの会議室といった風情の部屋にはそこら中に寒天がおいてあった。

寒天の山
これが寒天

調理前の寒天て始めて見た。こうなってるんだ!これをキレイに整え袋詰めにして作業を78人ほどが取りかかっていた。シャッシャッという音が響く中寒天はきれいに整形されていく。こちらでは最終チェックも含め行なっており袋詰めの前にももう一度職員がチェック。食品だから当然ではあるが厳しい品質検査というものを目の当たりにして「すごいな」と。
このように形を整え4つずつ袋に詰めていく

余り近づきすぎない様に注意しつつお話を聞く


全て丁寧な手作業でこれは贅沢品だなあと。完全手作業ですやん。プレミアムがついてもええんちゃうかと。これで値段は普通とのこと。ひえええ!
も ちろん人件費が安いが故の仕事なのだろうけれども、こういった費用的には安いがどうしても必要な仕事というのが世間には沢山あるのだろうね。だってマラソ ン大会用の安全ピンの用意なんて主催者側がやるには手が足りないだろうけど、どこに出していいやらわからないからなあ。そういった需要に対してきちんと機 能しているという事実はなんだか僕を勇気づけた。彼らが社会でやるべきことがあるのだ、という事実がね。
再び一階に下りると今度は小さな町工場のような部屋に。
こ こでは精密機械系の企業から仕事を請け負いそれぞれ作業をしているという、よくある下町の工場そのものなのね。特別に作業の様子をのぞかせていただくと皆 さん熱心にひとつひとつの行程をこなしていて。もうこうなると見学が邪魔じゃないか心配で心配で。作業の邪魔にならないように休憩の合間に写真を撮ったり してました。
機械のアップ。ヨダレが出そう!

その他にも空き缶の選別やら牛乳パックの椅子を作ったりとかバラエティに富んだ仕事をそれぞれが取り組んでいた。
これが椅子。お年寄りに人気とのこと。
中身はこんな感じになってる。
職員の方にもお話を聞き「それでは」と外に出たときに、ふとひらめいた。
こ の企画を始めて正直どうしたらいいんだろうとずっと考えていたんだよね。僕が出来ることは何もないなあと。だって障がい者がこの社会で生きていくことは健 常者に比べて多大な困難があることは疑いようのない事実なわけで。そしてそんな彼らの問題を解決することは僕1人ではぶっちゃけ無理ですよ。ただ彼らの働 いている様子を見て湧いたエネルギーのようなもの、これは人々に何かを与えるのではないだろうかと思ったのですね。そうだ、彼らの状況を変えるのではなく 彼らの働いている様子に触れることが出来ればそれで十分なのではないだろうかと。その感動がもしかすると何かを生み出す力の一端になるかもしれないし。そ して何よりも僕自身が何かを生み出す力をもらったような気がしたのです。
そう思ったらををををを!と矢継早に思考は進み「あ、これは僕がたどった道を観客に追体験させることが出来ればそれは作品になるかもしれないなあ」というところにたどり着き
「そうだ、ツアーやればいいんじゃん!」というシンプルにして強いアイディアが浮かんだのでした。
そういえばここまで車で直ぐだったなと思い出しOさんに「歩くとどれくらいかかるのかな」と聞きながら地図を見るとものすごく近い。前回訪問したひまわり作業所も歩いていけるとなるとこれは街歩きツアーとしてまとめることが出来そうだなと1人で嬉しくなりそこからしばらくOさんと後から来たKさんを相手にイタコ状態でアイディアを喋ったのでした。

いい刺激とヒントを頂き、プロジェクトが形を見せ始めた一日でした。
をををををを〜!がんばるぞお。