と茅野市民館のOさんから連絡が来たのはベルリンにいる時だった。
茅野市民館には以前に一度だけ来たことがある。京都のモノクロームサーカスと共に合宿形式のWSを行なったのだ。もう5~6年前になるがここを設計した建築家とそのゼミの学生等も交えてにぎやかでたのしいWSだった。
ベルリンから帰国後すぐにバスで茅野に向かった。「障がいを持った人やその周りの人たちと共に何か企画を出来ないか」というのが趣旨だった。何をするかはまったくの自由というか白紙の状態でこちらに託された。取りあえず何か考えますといってはみたものの全く初めての世界でピンと来るようなアイディアも出ないまま再びこちらを訪れたときに「せっかくなら滞在させてもらえませんか?」と切り出してみた。「限られた期間で行ったり来たりして制作するのは限界があるし、なによりもリサーチに時間がかかる。むしろリサーチこそが是非必要で、それならばアーティスト・イン・レジデンスということで3、4ヶ月ほどこちらに実際に住んでそういった人たちとゆっくりつきあいながら何が出来るか考えさせて下さい。」と提案した。
そこで僕は茅野で働きながらリサーチをしてみようと目論んだ。それも出来れば福祉関係の施設で働ければ取材もかねて一石二鳥だし潜伏取材みたいでかっこいいじゃん!といつものように軽い気持ちで思いつき、ちょうど市民館の職員のご家族のお家が丸々一軒空き家になっていてそこに住めるという事情もあり、以前から田舎暮らしに憧れていたことも重なって長期間滞在してじっくりやらせてもらうことになったのだ。
そんな経緯で始まった今回のプロジェクトは雨男の僕が雨を連れて茅野にやってきた2014年9月1日、漠然としたままながら本格的にスタートしました。
「最初は市役所の人にご挨拶に行きましょう」
ええい!見せてしまえ!時給はこんな感じです。交通費付き |
その後社会福祉協議会Kさんとその同僚の方々に会う。
第一日目はなんだかリサーチよりも仕事のお願いで終わったような気もするがまあ顔合わせということで。「今度飲みに」という約束もきっちり出来たし関わって働いている人も今回の取材対象なのでいろいろ聞けそうでありがたい。
市民館に帰って今日の成果を報告すると「え、ホントに仕事もらったの?」とかなり驚かれる。初日でまさか仕事がもらえるとは思っていなかったらしい。市民館でもアーティストに仕事を紹介するなんてのは前代未聞らしく(そりゃそうだ)果たしてどうなるんかいなと心配だったとのこと。ま、仕事とはいっても単発でこれ一回で何とかなるものでもないのだけどそれにしても幸先が良いとみんな喜んでくれる。
う〜ん、よちよち歩きをほめられたようで複雑だけどまあいいか。地方で仕事をする、ということの実情に触れたともいえるわけだしね。
僕としても大きなテーマをいきなり鷲掴みに出来るとは思えなかったし何でもそうだけど第一歩目は「踏み出す」ってことに一番のキモがあるわけで。焦ってもしょうがないってのは40歳を越えてから何となくわかってきたのよ!ああ、日々成長してるなあ。